湯浅啓史 一般質問 2020年6月29日「20年後を支える人材をどのように育成していくか伺う」全文(議事録より)
湯淺啓史
本日は教育のことについて質問をさせていただきます。
この5月より新しく杉谷教育長が着任をされました。本来なら新たに教育長が着任をされれば、その所信をお示しいただいて、我々議員もそういった考えを示していただく機会があってもよいかと思っています。ただ、議会にはその制度がございませんので、また、本日は一般質問の時間でございますので、質問の形を借りまして、できれば杉谷教育長の所信をお聞かせ願えればと考えておりますので、よろしくお願いします。
今般のコロナウイルス禍、これはあらゆる分野に大きな影響を及ぼし、これまでの価値観をも崩していると私は感じています。もちろん価値観の変換というのは様々な場面で起こってきたわけですが、今、日本の置かれている状況は人口減少、そしてまた経済の後退と非常に難しい状況の中において、さらに、このコロナウイルス禍が大きな影響を与えているという非常に難しい時期と。そのような時期においては、将来を予測すること、あるいは評論することが重要なことではなく、いかに切り開き形づくっていくかが重要であると考えています。
現在、小中学校に在学している子どもたちは、もう20年たちますと、ほぼ全員が社会の大きな戦力として活躍をしていただくことになります。そのような子どもたちの育成に今何が必要なのか、教育長はどのようにお考えになっているのか、お聞かせ願いたいと思っております。
そして、項目といたしましては、20年後を支える人材となり得る子どもたちに、どのようなサポートが必要か。
そしてまた、ICT分野などのツールをどのように取り入れていくのか。
また、ソーシャルディスタンスをはじめとした新しい生活様式を、教育現場にどのように応用していくのか、どのような分析がなされているのかなどなど、お聞かせ願いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
杉谷教育長
淺議員さんほうから、20年後を支える人材をどのように育成していくのかという問いにて、私の考えを述べてほしいということでございますので、3点のご質問にお答えする形で5月1日より就任しております教育長としての考えを述べさせていただきたいと思っております。
教育長に就任する前といいますか、本年度より小中学校におきましては、新しい学習指導要領の実施と、中学校は来年でございますけれども、年次的に実施をされるという時期でございました。また、そういう折にコロナウイルスという感染拡大防止等の措置も取られながら、学校が休業していく、子どもたちの学びが学校という場ではなく、家庭の学習になってしまうという、そういう状況を目の当たりにしまして、学校とはどういう役割があるのかということも就任します前の4月にいろいろと考えておりました。そうしたことも含めて少し所感を述べさせていただきたいと思っております。
ご質問の20年後を支える人材ということでございますけれども、未来の出雲市を担う小中学校の子どもたちが、20年後に社会で活躍する頃には、恐らく現在の社会構造あるいは雇用環境等は大きく変化しているものと考えられます。
また、今般のコロナウイルス感染症の世界的な拡大に象徴されますように、予測が困難な時代になっているとも考えられます。学校教育におきましては、これまでどちらかというと、知識や技能の習得が重視をされてきたように感じております。それはそれとして、生きて働く知識・技能の習得ということで大事な部分ではありますけれども、これからは、そうした知識・技能を基に、それらをどう活用していくのか、言い方を変えますと、未知の状況に対してどのように対応していくのかということ、また、自らの将来をどう考えて人生を送っていくのか、言い方を変えますと、どのように社会・世界と加わっていくのかという、そうしたことが考えられる、あるいはそうしたことを考える基になる知識・技能を備え、あるいは思考力、判断力、表現力を備えた、そういう人を育てることが、これからの教育に期待されていることでありますし、教育委員会として取り組んでいくべきことであろうというふうに考えております。
さて、そのためには、これまで歩んできた自分の人生、子どもたちでいうと、そう長い人生ではありませんけれども、それでもその中において得た知識・経験だけで物事を考えるのではなく、言われておりますIOT、モノのインターネットというふうに訳されておりますし、AI、人工知能といった最新テクノロジーを使いこなし、必要で適切な情報を収集し分析する力が求められると思います。そして、そうしたことを基に最終的に自分の考えを導くことができる人を育てることを目指すべきと考えております。
加えて、ソウゾウ力の豊かさを合わせ持つことも重要だと思います。ソウゾウ力には、2種類あると考えております。クリエーションとイマジネーションの2種類のソウゾウということでございます。最新テクノロジーを活用した便利な社会になっていけばいくほど、五感を通して直接いろいろな「ひと・もの・こと」に触れ、本物の体験を数多く積むことで、豊かな感性、あるいは先ほど申しました二つのソウゾウ力を育てていくことができると思います。また、そうしたことを育んでいく必要性、重要性はさらに増していくとも考えております。
現在、学校教育で行っております「ふるさと学習」、この充実にも努めたいと思いますし、体験を通して地域の課題やふるさとの良さなどを見つける中で、夢や目標を実現するために自らが考え、行動できる力がつくような教育を進めてまいりたいと思います。
それらの力を手に入れた子どもたちが、将来訪れるであろう様々な時代の変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくこと、複雑な状況変化の中で手段や目的を再構築できるようになることで、20年後、個人または社会の成長につながる新たな価値を生み出すグローバルな人材が育っていくというふうに期待をしたいものだと思っております。
このたびの国のGIGAスクール構想に伴う「児童生徒1人1台端末」の早期の実現を目指すICT教育環境整備事業、これも一つのきっかけにしたいと考えております。ハード、ソフト両面における環境整備に努め、本市の小中学校の教育がその方針に沿ったものとなるよう進めてまいりたいと思います。
最後のご質問でございますけれども、新しい生活様式、これを教育現場にどのように応用していくのかということでございましたが、一斉臨時休業の措置を取った小中学校を再開し、文部科学省の通知等も踏まえながら、感染防止に取り組んでいる中で、これまで当たり前に行ってきたことが当たり前にできなくなっている状況がございます。学校運営の再構築が強く求められております。これからの日常は、子どもたちを取り巻く急速な社会の進展も含め、想定できないことが起こり得ることを前提に、常に柔軟に対応していくことが必要であると痛感をいたしました。それは、子どもたちも同様でございます。これからの学校教育では、教師や保護者など大人からの指示や情報にただ従うのではなく、自らが考え行動できる自立した人を育てることを念頭に置いた取組が何より必要と思います。今般のコロナ禍で経験していることを、将来の教育の在り方に向けた新しい考え、仕組みづくりに生かしてまいりたいと思います。
以上、答弁とさせていただきます。
湯淺啓史
大変すばらしいお答えを頂いたと思っています。ありがとうございます。もっと語っていただいてもよかったと思いますし、また、先ほど述べられたことはぜひ何か書いたものにして、教育委員会で共有をしていただくとか、ぜひ方針としてお示しいただきたい、そのよさに思える非常にすばらしいお答えだったと思っています。
中でも、私、実はこの後、二つのソウゾウ力という話をしようかなと思っておりまして、メモをしておりましたですけれども、ソウゾウ力には二つありますというお話をしようと本当にまさに思っておりまして、まさしくそのとおりだと思っており、それこそがこれから求められる子どもたちの力、それでこそ新しい価値観へ対応していけると思っています。そのような方向で今後の教育行政を進めていただくことは非常に重要になってくると思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思っています。
さて、時間もありますので、少しその価値観のお話をさせていただきたいと思います。ちょうど教育長さんと私は一つ違い、年もほとんど同じで、教育長さんのほうが一つお兄さんでありますけれども、この価値観というようなところの大きな転換点というのが、我々の世代も感じてきたことがいろいろとありました。中でも、日本が非常に高度経済成長を果たして、ジャパン、アズ、ナンバーワンと言われるような、非常に工業力をもって世界経済を席巻しているような時代があり、本当に輝ける日本、そのような時代も確かにあった。それに続く不動産や株のバブル経済、そしてそれの崩壊というものも体験をしてまいりました。その過程では、プラザ合意と呼ばれるドルと円との調整もありましたし、ベルリンの壁の崩壊という大きな事件もあった。その後には、不幸にもテロの時代が起こり、さらには大災害も体験をしてまいりました。そのような中で、我々はその時々で価値観を少しずつ変えてきて、ああこれはこうなんだな、これはこうなんだなと、こういう考えはやめて、今後はこういった方向でいかないと駄目なんだと、そういったことを感じながら歩んできたものでございます。
今般は、これに加えまして、世界情勢としてはやはりパックスアメリカーナと呼ばれるアメリカの支配の下の平和、それがやや陰りを見せているという非常に日本にとっては大きな問題が陰を差している、そのような時代であります。
そこへ向けて先ほど話を申しあげましたように、日本においては、経済がやや鈍化をしていて、右肩下がりの経済の中で、どうやって将来をつくっていくのか。そしてまた、人口は確実に減っていくという予測の中で、これもまた社会構造をどのようにしていくのか。それが非常に難しいかじ取りが求められる。そこへ向けて今般の感染症の状況、まさに我々は今こそ価値観を変えていって、新しいものへ対応していくということを今すぐに始めなければ、20年後の社会は惨たんたるものになっている、そのようなことも思ってしまう、そのような状況でございます。
ちょうど40年以上ぐらい前、45年ぐらい前でしょうか、我々が小学校や中学校の頃でしたですけれども、その頃はフォークという歌が非常に若者の心を捉えていて、その一人の吉田拓郎という人が歌った歌の中に、このような歌詞があります。「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」という言葉があり、この言葉には当時の若者が大きな影響を与えて大きな共感を得た。自らこの社会をつくり変えていこうという、そのような大きなうねりにさえなったような、そのような言葉であったというふうに思っております。これは、やはり新しい価値観に対応しようという意思そのものを示しているんじゃないかなというふうに思います。
先ほど教育長も言われましたように、これまでもこうだったから、これからも当たり前のようにこうする、それはもう通用をしません。そしてまた、ここまである程度時間をかけて計画を立ててきたものだから、このまま行おうではないか、それも一理あることですけれども、状況が変わっている、価値観が変わっている状況の中では、その計画さえも見直しをしなければならない。そのような状況であると思っております。
さて、対応しようとする、先ほどの意思、決意、そのようなものが子どもたちに求められ、先ほど言われましたように、二つのソウゾウ力、イメージのほうの想像力とクリエートのほうの創造力、この二つをもって対応していくということが語られて、非常に私は安心をいたしましたが、この4月、5月、テレビなどで見かけましたのは、テレワークと言われるものが普及をして、別に東京にいなくてもいいんじゃないかという状況を見せられた。世界がつながる方策の一手法を見せられ、別に中心は東京ではなくてもいいんじゃないという状況をまさにまざまざと見せられた。ならば、この地域であっても同じことができるでしょうというようなことが、これからはあるのではないか。
そのような中で、先ほどこれまでの技術の習得、そういったものではなくて、どちらかというと、それに対応するための力を伸ばしていくんだというお答えだったというふうに思っておりますけれども、私もそのとおりだというふうには思っておりますけれども、ある面、やはり新しいスキルというものは大いに習得をしていって、世界標準の環境でその技術力と渡り合えるという人材をつくっていかなければ、この国はなかなか将来がないというふうに思っておりますし、当然、地域もまさしくそのとおりだというふうに思っております。
その中で、コミュニケーション能力とやはりスキル、技術力、こういったものについて、ちょっと先ほどの答弁だとややそれよりも別のものというお答えだったというふうに思っておりますけれども、その点、確認という意味でこういったものは、今後どのように教育の中に位置づけられていくのか、お答えをください。よろしくお願いします。
杉谷教育長
先ほど答弁の中で、これまでは知識・技能の習得にどちらかというと、重点を置いていたんじゃないかということは申しあげました。そのことはそこのことで非常に重要なことでもあります。今回、デジタル化が進展していくであろう将来の社会の中で求められる人材、あるいは教育として育てていくべき人材を考えたときに、一つは、考えるベースとなる当然のことながらの知識・技能は必要であろうというふうに思っています。ただ、一人で物事を解決していくという、そういう社会ではもはやないと思います。様々な情報を収集しながら、他者と協働して課題解決に向かう、そういう中では、コミュニケーション力というのは当然に必要なことでありまして、これを育てていくということは学校教育の中であっても重視すべき内容であることには間違いありません。加えて、ソサエティ5.0の実現に向けては、グローバル化する社会の中で、課題対決するにあたってのコミュニケーション力というのは、共通な言語でもっての意思疎通ができる力というふうにも言われております。
具体的に言いますと、世界で共通する言語というのは、英語であろうかなと思いますし、我々はどちらかというと、国語としての日本語ということでのコミュニケーション、あるいは読解力を高めてくるという教育をしてまいりましたけれども、もう傍らで英語を使った国際標準の言語を使ったコミュニケーション力の向上ということも必要かもしれません。そういう意味で、今回、完全実施となりました学習指導要領にあっては、小学校からの外国語教育も充実を図られたところですので、これらの学習もやはり将来を見据えた力として何が必要かということをしっかり押さえての学習指導になっていくようにしてまいりたいというふうに思っております。ちょっと十分なお答えではないかもしれませんが、コミュニケーション力というのは当然に重視されるものというふうに考えております。
湯淺啓史
それから、学び方という点でございます。特に小学校の低学年や小学校時代はなかなか難しいかも分かりませんですけれども、やはり自分はこういった学び方を選択したいんだとか、そのようなことが学校現場でできるのかどうか。これまではちょっとなかなかできなくて、画一的に恐らくやっていらっしゃったんだろうというふうには思っておりますけれども、今後は自分を律していかないといけないし、自分でデザインをして将来を切り開いていく力をということであれば、ある程度学びということに関しても選択肢を自分で持ってやっていく。これまで大学で行っていたような選択をしながら、高校で理系を選択する、文系を選択するというような形で選択というものがそこであったわけですけど、義務教育の中ではそういったものというのは、今後どのように位置づけられるのか、お考えをお聞かせください。
杉谷教育長
先ほど低学年では難しいのかなというご発言もございましたけれども、その発達の段階に応じて学ぶことの意味でありますとか、学ぶことによって自分がどういう高まりを見せていくのかとか、そういうことを実感させていくということは、小学校低学年段階からでもできるというふうに思っておりますし、むしろそういう授業に変わっていかなければならないとも思っております。
答弁の中で、これまで当たり前だったことが、これからも当たり前かというところに関しまして、大きくやっぱり学校の授業が変わっていくべきときかなというふうに思っております。その一つのきっかけが今回GIGAスクール構想で示されております、本市としても導入を今計画しつつあります1人1台の学習用パソコンというものは、大きなツールになるかなというふうに考えております。
湯淺啓史
これは、質問の趣旨とはちょっと違うので、言うだけにしておきますけれども、リカレント教育というものがあって、やはり学び直しといいますか、そういったものを社会に出てから、ああ、これが必要だったなというようなことがあって、どんどんその必要なものを学んでいくということが社会に出てからも必要になってくるということがあると思うんですけれども、そういった中で出雲市には、ちょうど科学館というものが教育委員会の所管であって、前から言っているんですけども、そういったものを社会に出た人に開放して、出雲市は社会に出てからもこういった教育活動ができるんだというようなことも、今後はあってもいいのかなというようなことも考えたりしています。これはちょっと質問の趣旨とは違うんで、耳に入れておいていただくだけで結構でございます。
最後に、私の考えといいますか、気づいた言葉をもう一つ言わせていただきますと、啓発という言葉の基になった故事成語といいますか、論語の中に「憤せずんば啓せず。非せずんば発せず」という有名な言葉があって、その後に「一隅を挙げて三偶を以て反らざれば、則ち復せざるなり」というふうに続くそうでございますけれども、先ほど言われたとおりでございます。自分で考え、問題を解決しようとする意欲がなければ、教え導くことはできないというふうに、あの論語を成立させた孔子も教育の限界ということで、そのようなことを語っていらっしゃいます。ただし、この私なりの解釈でいきますと、これはやはりある程度専門的な分野のところに行ったときに、こういった姿勢がなければ、とてもじゃないけども、教えられないよと言っているのだと思います。
小学校の最初からこうじゃないと駄目だよということは私は言うつもりはないんですけれども、義務教育の9年間を通して、ぜひこういった、ここに示されているような自分から考えて、問題を解決しようとする意欲を持った子どもたちをぜひ育て上げていただきたいというふうに思っております。
そのためには、やはり1番は、教育ということでは学校が大きな基盤となるわけですけれども、最後に、家庭や地域というものにどのような期待を持っていらっしゃるのか、最後にそれだけお聞かせいただきたいというふうに思います。
杉谷教育長
学校は教育の場としてはとても重要なところであると思っていますが、現在、学習指導要領の改訂の中の一つのキーワードにありました社会に開かれた教育課程というものがございます。子どもたちを育てていくその目標を共有して、家庭と地域が一緒になって子どもの育ちを支えていくということであります。
教育は学校にだけお任せということではなくて、子どもたちの将来の姿を学校、家庭、そして地域の皆さんが共有をして、それぞれの立場で子どもたちの学びを支えていただけたらと思っております。
とりわけ、家庭、地域の皆さん方に期待するべきこととしては、答弁の中でも申しあげましたけれども、いろいろな本物に出会わせてほしいということでございます。子どもたちの驚きを生み出す、そこから学びに向かう力といいましょうか、学ぶことの意欲が高まるのではないかというふうに思っております。ぜひ子どもたちに本物にたくさん出会わせていただいて、いろいろな驚きを経験させてほしいというふうに願っております。
湯淺啓史
ありがとうございました。大変今日は杉谷教育長さんといいディスカッションができたというふうに思っております。ぜひ今後の教育行政の充実に向けて頑張っていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。