一般質問「脱炭素社会の実現」について
一般質問(2021年6月11日)湯淺啓史
令和3年度6月議会の一般質問で、脱炭素社会の実現について、市の考えを聞きました。「2050年、二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、ゼロカーボンシティに挑戦」は新市長掲げるアジェンダとしてふさわしいのかも知れませんが、その実現は大変難しい課題と考えています。
質問と回答の概要
脱酸素社会実現は今後本格的に起こる社会変容への対応
このたび示された新市長の施政方針の中で、市政運営のポイントとして取り上げられてる「脱炭素社会の実現について」は、今後本格的に起こっていく社会変革に対応していくことを市政運営のポイントとして示されたものと考え、大いに同感をする。
「脱炭素社会」「カーボンニュートラル」「ゼロカーボンシティ」という言葉の定義、整理
脱炭素社会、カーボンニュートラル、ゼロカーボンシティという言葉、それぞれについて市長はどのように受け止めをし、定義、整理がされているのか。
- (市長)
脱炭素、カーボンニュートラルとゼロカーボンは、二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることと定義 - 脱炭素社会はそれが実現された社会
- ゼロカーボンシティは、2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体のこと
- なお、ここで言う実質ゼロとは、家庭や事業所から出る二酸化炭素を減らし、森林等による吸収分と相殺して、実質的な排出量をゼロにすること
ゼロカーボンシティへの挑戦、脱炭素のまち出雲とは?
施政方針の中で「2050年、二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、ゼロカーボンシティに挑戦することを宣言いたします」とあるが、ゼロカーボンシティへの挑戦とは、市が行う取組として、具体的にどのような事柄を指すのか。
「最終的には脱炭素社会のまち出雲を実現してまいります」という言葉で締めくくられているが、脱炭素のまち出雲とは、市がどのような状態になると実現したと言えるのか。
- (市長)
市民や事業者の皆様に向けた啓発を進める - 市域全体で再生可能エネルギーの導入支援、再生可能エネルギーにより削減した二酸化炭素の排出相当分をクレジット化し、企業等に販売して、収益を森の再生等に生かす「J-クレジット制度」の活用促進
- エネルギー機器等の導入、森林保全などの取組を強化
- 具体的には令和4年度(2022)に策定する「出雲市地球温暖化対策実行計画」において示したい
なぜ、カーボンニュートラルの鍵は水素なのか?
施政方針の中で「カーボンニュートラルの鍵は水素と言われており、国や産業界の知見と技術を活用して再生可能エネルギーのベストミックスを進め、脱炭素社会のまち出雲を実現してまいります」と述べられるが、あえてなぜ水素に焦点をあてるのか。
- (市長)
水素は、水として地球上に存在しており、枯渇することがない、ハイパワーなエネルギー - 燃焼しても水に戻るだけで二酸化炭素を排出しない、クリーンなエネルギー
- 近年では、水素と酸素の化学反応により発生する電力でモーターを動かす燃料電池車などの燃料に活用されており、化石燃料の代替エネルギーとして注目されている
- エネルギーとして水素のポテンシャルは非常に高いことから、脱炭素社会の実現に向けての鍵を握るものと考えている
地域新電力会社へ市が出資することはカーボンニュートラルに資するのか?
続いて、7月に設立予定されます地域新電力会社に出雲市も出資し、地域新電力事業に取り組むことはエネルギーの有効利用や地産地消という観点以外に、脱炭素社会やカーボンニュートラルに資する取組と言えるのか。
- (市長)
本年7月に設立する官民共同出資による新電力会社は、次期可燃ごみ処理施設の廃棄物発電を主要電源として調達し、その電力を市内公共施設に供給するもの - 廃棄物発電が主電源となる新電力会社は、現在契約している電力会社より排出係数が低いため、二酸化炭素排出量を令和元年度(2019)に比べ約58%削減できると見込んでいる
ゼロカーボンシティへ挑戦するための合意形成は?
先ほどお聞きした脱炭素社会、カーボンニュートラル、ゼロカーボンシティなどの言葉の理解、認識に市職員の皆さんはもとより、住民間で差異があっては歩む方向が定まりません。
ゼロカーボンシティへ挑戦するための合意形成を今後どのように図るのか、その道筋をお聞かせください。
- (市長)
ゼロカーボンシティの実現のためには、何より市民や事業者の皆様の理解と実践が必要不可欠 - 日常生活の中で行える節電・節水やごみの削減・分別の徹底など、日頃できることから地球温暖化対策に取り組んでいただく
- 省エネ自動車への買換えや再生可能エネルギーの導入など、さらなる取組をお願いする
- 事業者の皆様には、これらのほか、エネルギー効率の高い設備・機器の導入や環境マネジメント実施などにも取り組んでいただく
- 市民や事業者の皆様に対し、より効果的な啓発を進めることで、ゼロカーボンに向けた意識高揚を図るとともに、国・県の施策を活用しながら、必要な支援策を講じたい
排出係数とはどのように算定するのか?
温室効果ガスの削減とCO2の吸収などはどのように計測するのか。
そしてまた、これは市が集計可能なことなのか。
- (環境担当部長)
燃料や電気などのエネルギーの使用量、これにエネルギーの種別によって異なる排出係数がそれぞれ国によって定めてあり、その排出係数を乗じて算出するもので国が公表する - 石油や石炭などの燃料は、それぞれ戸別、種別に応じてこの排出係数というのが定まっている
- 電気については、電力会社によってその排出係数が異なっているので、電力会社の調達する電力の電源構成の違いによって係数が異なる
カーボンニュートラルに対するコストということをどのように考えているのか?
水素を含めて再生エネルギーと言われるものへの転換は、非常にコストのかかることだと考えている。
特に水素での発電は、1次エネルギーではなく、2次エネルギー、場合によっては、それをまた加工して3次エネルギーというカテゴリーに分類をされる、非常にコストのかかるエネルギーだと考える。
水素をエネルギー源とすることをはじめ、カーボンニュートラルに対するコストということをどのように考いるのか。
- (環境担当部長)
水素に限らず、再生可能エネルギーの拡充・活用、あるいはCO2の削減に向けた、例えば回収のシステムなどのインフラ、技術革新、などに非常にコストがかかるということは承知している - 国としても今この取組を加速している中で、制度、支援策等を活用しながら、市として可能な対策を講じたい
脱炭素社会には原子力による発電が必要ではないか?
先日施政方針に対する代表質問を聞きながら、少し疑問が浮かんだ。
代表質問では島根原子力発電所の再稼働に関する質問もあり、市長は、「立地自治体と同様の安全協定の締結を強く求めていく」と回答され、「再稼働につきましては、今後様々な意見をお聞きして考えを定める」趣旨の回答をされた。
このことと、2050年二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、ゼロカーボンシティに挑戦することの宣言を今先行して行うということは、私は順序が逆で拙速でないかと感じている。
今回、2020年に臨時国会で菅総理がカーボンニュートラル宣言をされた。これを受けてグリーン成長戦略が策定され、そこでは原子力については、「可能な限り依存度を低減しつつも、安全向上性を図り引き続き最大限活用していく」と書いてあって、いろいろな予測とか、データを見ると、カーボンニュートラルを実現するためには20%から25%ぐらいは原子力発電に依存しなければ実現しないということが示されている。
片やエネルギー政策は地球温暖化対策から脱炭素社会には原子力による発電が必要とされていて、政府のその方針を追従するように、このたび出雲市でも2050年二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、ゼロカーボンシティに挑戦することを宣言された。
その一方で、島根原子力発電所の原子炉の再稼働にはいまだ態度を決めていないとの回答で、私はこれは少しつじつまが合わないと思う。この点についてはどのような整理をされているのか。
- (市長)
このたびのゼロカーボン宣言というのは、この出雲市にある再生可能エネルギーをきちんと有効利用していく、そしてまた地産地消していくための取組。市民の皆様方全体で様々な省エネ活動であったりとか、無駄をなくしていくような取組。森林再生を図っていく中で、吸収していく取組。など、この中にあるものでしっかりとゼロを目指すということで、国のエネルギー政策である原発を稼働してゼロにするということの前提に立っていない
最後に、カーボンニュートラルを実現することは、大きな社会変容を受け入れること
以下、私なりの考えです。
本来、宣言にあたっては「カーボンニュートラルを実現することは、大きな社会変容を受け入れること」それを目指すことだと宣言しなければならないと思う。
カーボンニュートラルに対する技術を一つ一つ正しく理解し、その費用対効果を正しく分析することが必要。
2050年までの30年間のかかるコストもまた正しく受け止める必要が前提であると考えている。
その上で、脱炭素社会というのはこういう社会変革だ、社会変容だと説明をする必要があるとも考える。
さらに、今後、おおよそこのぐらいのコストを受け入れなければならない、人々が暮らす上での様式もかなり変化することが予想される。例えばガソリン、灯油、LPガスなどは使わない社会となる可能性がある。
今現在の技術ではここまでは大体見込みが立っているが、その先はまだ可能かどうか分からない部分があると、体系立てて説明しながら進めていく必要がある事柄だと考えてる。
その際には、今後導入される森林環境税、また、カーボンプライシングの一つとして炭素税なども検討されることなど税負担の議論、そしてベースロード電源としての必要性から原子力発電所活用の議論なども先行して行い、理解と合意を得る方向で進めることが求められる。
早急に宣言を補って議論を開始をしていただきたい。
質問時に配付した資料
議事録より 「脱炭素社会の実現」について の質問
質問
今回は、大きく2点についての質問をいたします。
このたび示されました新市長の施政方針の中で、市政運営のポイントとして取り上げられています脱炭素社会の実現についてと、デジタルファーストの推進についてとを少し掘り下げて質問をしたいと思っています。
この2点は、いずれも今後本格的に起こっていく社会変革に対応していくことを市政運営のポイントとして示されたものであると、私も考えておりまして、大いに同感をするものです。
それでは、まず初めに、今議会に示された市長施政方針に市政運営のポイントとして脱炭素社会の実現が掲げられた点について、お聞きします。
施政方針の文中、脱炭素社会の実現についての段落において、脱炭素社会、カーボンニュートラル、ゼロカーボンシティという言葉が使われておりますが、それぞれについて市長はどのように受け止めをし、定義、整理がされているのか、お答えを頂きたいと思っています。
次に、同じく文中に、「2050年、二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、ゼロカーボンシティに挑戦することを宣言いたします」とありますが、ゼロカーボンシティへの挑戦とは、市が行う取組として、具体的にどのような事柄を指すのか、お伺いしたいと思います。
さらに、同じく文中に、脱炭素社会の実現についての段落について、「最終的には脱炭素社会のまち出雲を実現してまいります」という言葉で締めくくられております。
脱炭素のまち出雲とは、市がどのような状態になると実現したと言えるのでしょうか。お示しください。
以上が施政方針に示された脱炭素社会の実現についての部分において、しっかりと焦点を定めなければならない部分と感じましたので、確認をさせていただきたい項目です。
そして、あと3点質問があり、ここからは私の疑問点となります。
施政方針の中で市長は、「カーボンニュートラルの鍵は水素と言われており、国や産業界の知見と技術を活用して再生可能エネルギーのベストミックスを進め、脱炭素社会のまち出雲を実現してまいります」と述べられています。
再生可能エネルギーには多くの技術があると考えますし、温室効果ガスを排出しない発電方法や温室効果ガスを吸収する技術など、数多くある中、あえてなぜ水素に焦点をあてられるのか、その真意をお聞かせください。
続いて、7月に設立予定されます地域新電力会社に出雲市も出資し、地域新電力事業に取り組むことはエネルギーの有効利用や地産地消という観点以外に、脱炭素社会やカーボンニュートラルに資する取組と言えるのかどうか。この点につきましては分かりやすくご示唆をいただきたいと考えます。
さて、2020年10月、菅総理大臣は、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言され、その後12月に経済産業省が中心となり、関係省庁と連携して2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略が策定されています。今回配付しています資料は、その関連資料として示されたもので、カーボンニュートラルの産業イメージとカーボンニュートラルの広がりというイメージ図です。
脱炭素社会、カーボンニュートラルは目指すべき道であることは重々理解しつつも、この資料を見れば見るほど、私は2050年二酸化炭素排出実質ゼロを目指すことが容易ならざるものであることを感じています。
質問の最後です。ゼロカーボンシティへ挑戦するための合意形成を今後どのように図るのか、お伺いします。
ゼロカーボンシティに挑戦との宣言は、これからそこへ向けた取組を開始するというスタートの号砲であると思いますが、先ほどお聞きした脱炭素社会、カーボンニュートラル、ゼロカーボンシティなどの言葉の理解、認識に市職員の皆さんはもとより、住民間で差異があっては歩む方向が定まりません。
ゼロカーボンシティへ挑戦するための合意形成を今後どのように図るのか、その道筋をお聞かせください。
回答(市長)
脱炭素社会、カーボンニュートラル、ゼロカーボンシティの定義についてのお尋ねです。
国においては、脱炭素、カーボンニュートラルとゼロカーボンは、二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることと定義をされています。また、脱炭素社会はそれが実現された社会、ゼロカーボンシティは、2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体のことです。本市においても、これらの語句において、国と同じ定義づけをしているところです。
なお、ここで言う実質ゼロとは、家庭や事業所から出る二酸化炭素を減らし、森林等による吸収分と相殺して、実質的な排出量をゼロにすることです。
次に、ゼロカーボンシティに挑戦とは、市が行う取組として具体的にどのような事柄を指すのか、また、「脱炭素のまち出雲」とは、市がどのような状態になると実現したと言えるのかというお尋ねです。
市では、ゼロカーボンシティを実現するため、市民や事業者の皆様に向けた啓発を進めながら、市域全体で再生可能エネルギーの導入支援、再生可能エネルギーにより削減した二酸化炭素の排出相当分をクレジット化し、企業等に販売して、収益を森の再生等に生かす「J-クレジット制度」の活用促進や、省エネルギー機器等の導入、森林保全などの取組を強化していく考えです。
具体的な施策については、現在行っている取組についての評価検証を踏まえた上で、令和4年度(2022)に策定する「出雲市地球温暖化対策実行計画」において示したいと考えています。
これらの取組により、市域から排出される二酸化炭素量が実質ゼロとなることで「脱炭素のまち出雲」が実現したと考えています。
次に、なぜ、カーボンニュートラルの鍵が水素なのかという質問です。
水素は、水として地球上に存在しており、枯渇することがありません。また、宇宙ロケット燃料に使われるなどハイパワーなエネルギーです。そして、燃焼しても水に戻るだけで二酸化炭素を排出しない、クリーンなエネルギーとして期待されています。
近年では、水素と酸素の化学反応により発生する電力でモーターを動かす燃料電池車などの燃料に活用されており、化石燃料の代替エネルギーとして注目されています。
このように、エネルギーとして水素のポテンシャルは非常に高いことから、脱炭素社会の実現に向けての鍵を握るものと考えています。
また、私は、平成26年(2014)の3月議会で、「水素の取組を地球温暖化のために」という質問もさせていただいたところでありますし、その前年度には、循環型協議会の会長として東京のほうから講師の方を呼んで、この取組についての講演をしていただいたりとか、かねてより非常に関心のある分野でして、また、この活用に大いに関心を寄せているところです。
そして、地域新電力事業に取り組むことが、なぜ脱炭素社会に資する取組と言えるのかという質問です。
本年7月に設立する官民共同出資による新電力会社は、次期可燃ごみ処理施設の廃棄物発電を主要電源として調達し、その電力を市内公共施設に供給するものです。
施設が電気を使用することで排出する二酸化炭素の排出量は、電気使用量に電力会社によって異なる排出係数を乗じて算出したものです。廃棄物発電が主電源となる新電力会社は、現在契約している電力会社より排出係数が低いため、二酸化炭素排出量を令和元年度(2019)に比べ約58%削減できると見込んでいます。
次に、ゼロカーボンシティへ挑戦するための合意形成をどのように図るのかという質問です。
ゼロカーボンシティの実現のためには、何より市民や事業者の皆様の理解と実践が必要不可欠となります。今議会で表明した「ゼロカーボン宣言」を契機として、まずは、市民一人ひとりに地球温暖化問題に関心を持っていただくことが重要と考えています。
その上で、市民の皆様には、日常生活の中で行える節電・節水やごみの削減・分別の徹底など、日頃できることから地球温暖化対策に取り組んでいただくとともに、省エネ自動車への買換えや再生可能エネルギーの導入など、さらなる取組をお願いすることとなります。
また、事業者の皆様には、これらのほか、エネルギー効率の高い設備・機器の導入や環境マネジメント実施などにも取り組んでいただく必要があります。
これらの取組を推進していくため、本市としては、市民や事業者の皆様に対し、より効果的な啓発を進めることで、ゼロカーボンに向けた意識高揚を図るとともに、国・県の施策を活用しながら、必要な支援策を講じたいと考ます。
脱炭素社会の実現は大きな目標でありますが、かけがえのない「ふるさと出雲」を次世代につないでいくためには、市民、事業者及び市が連携して協働することにより、ぜひとも実現させたいと考えています。
再質問
先ほど排出係数という言葉も出きましたので、どのような状態になると実現したと言えるのかということに関連して、温室効果ガスの削減とCO2の吸収、そういったことでプラスマイナスゼロにしていくということだと思うんですけれども、これは、どのように計測をしていくんでしょうか。そしてまた、これは市が集計可能なことなんでしょうか。この点についてお聞きしたいと思います。
回答(環境担当部長)
議員のお尋ねの排出量の測定、算出についてです。
ここで申しあげます二酸化炭素の排出量とは、あくまでも生物が呼吸によって排出するといったものではなく、人間が様々な活動をすることによって生じる二酸化炭素であるという定義です。
その上で、主にはこの計算については、燃料や電気などのエネルギーの使用量、これにエネルギーの種別によって異なる排出係数がそれぞれ国によって定めてあります。その排出係数を乗じて算出したものです。
具体には、エネルギー消費統計調査等の様々な調査に基づき、事業所あるいは自治体からの報告を受けて、国のにおいて集計、算出し、公表しているものです。
市については、この国の公表結果、それをベースにしてデータとして活用できます。
また、石油や石炭などの燃料につきましては、それぞれ戸別、種別に応じてこの排出係数というのが定まっておりますが、電気については、先ほど新電力会社に関するお尋ねがあった際に触れましたように、電力会社によってその排出係数が異なっています。その電力会社の調達する電力の電源構成の違いによって、例えば火力発電を主力電源としている電力会社が供給する電力の排出係数というのは高くなり、逆に再生可能エネルギー等を主力とした電力会社については、その係数が低くなるということですので、その低い電力会社のほうから電力を購入すれば、同じ電力の使用量であっても二酸化炭素の排出量というのは低減するということになっています。
再質問
先ほど水素のお話で非常に関心のある分野だというお答えもありましたけれども、水素については、大変クリーンなエネルギーであるということは重々承知をしていますが、水素を含めて再生エネルギーと言われるものへの転換は、非常にコストのかかることだと考えています。
特に水素で発電するということになりますと、1次エネルギーでは当然ないわけで、2次エネルギーですし、場合によっては、それをまた加工して3次エネルギーというカテゴリーに分類をされる可能性もあって、非常にコストのかかるエネルギーだと思っています。水素をエネルギー源とすることをはじめ、カーボンニュートラルに対するコストということをどのように考えていらっしゃるのか、認識をお聞きしたいと思います。
回答(環境担当部長)
議員ご指摘のように、この水素に限らず、再生可能エネルギーの拡充・活用、あるいはCO2の削減に向けた、例えば回収のシステムなどのインフラ、あるいは技術革新、そういった部分に非常にコストがかかるということは承知をしておるところです。
そういったところについて、答弁の中でも触れましたように、国としても今この取組を加速している中で、制度、支援策等を活用しながら、市として可能な対策を講じたいという考えでおります。
再質問
ぜひ進めていただきたい項目でございますので、よろしくお願いします。
先日施政方針に対する代表質問を聞きながら、少し疑問が浮かびました。代表質問では島根原子力発電所の再稼働に関する質問もありまして、市長は、「立地自治体と同様の安全協定の締結を強く求めていく」と回答されまして、再稼働につきましては、今後様々な意見をお聞きして考えを定めるとの趣旨の回答をされたと記憶しています。
このことと、2050年二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、ゼロカーボンシティに挑戦することの宣言を今先行して行うということは、私は順序が逆で拙速でないかなと感じています。
1997年の京都議定書から始まったこの地球温暖化対策、ずっとその二酸化炭素排出を削減しようということで取り組んできたわけですけれども、2010年に民主党政権下で目標が大幅に引き上げられまして、そのときの裏打ちといいますか、根拠は、電源構成に占める原子力の比率を50%に引き上げるということが前提であったと記憶しています。
それから、2015年のパリ協定を採択して中間目標2030年、長期目標2050年を定めたわけですけれども、その際であっても、これはプラスマイナスゼロとは言ってない、80%削減ということでしたけれども、その場合であっても原子力発電所を25基から30基程度は動かしていくということが前提であるということでした。
今回、2020年に臨時国会で菅総理がカーボンニュートラル宣言をされたました。これを受けて先ほどもありましたようにグリーン成長戦略が策定され、そこでは原子力については、「可能な限り依存度を低減しつつも、安全向上性を図り引き続き最大限活用していく」と書いてあって、いろいろな予測とか、データを見ていきますと、やはりこれカーボンニュートラルをするためには20%から25%ぐらいは原子力発電に依存しなければ実現しないということがほぼうたわれていると感じています。
それらの資料を見ていきますと、片やエネルギー政策は地球温暖化対策から脱炭素社会には原子力による発電が必要とされていて、政府のその方針を追従するように、このたび出雲市でも2050年二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、ゼロカーボンシティに挑戦することを宣言されたわけです。
その一方で、島根原子力発電所の原子炉の再稼働にはいまだ態度を決めていらっしゃらないようで、私はこれは少しつじつまが合わないんじゃないか思うんですが、この点についてはどのような整理をされているのか、お聞かせください。
回答(市長)
このたびのゼロカーボン宣言というのは、この出雲市にある再生可能エネルギーをきちんと有効利用していく、そしてまた地産地消していくための取組であり、市民の皆様方全体で様々な省エネ活動であったりとか、無駄をなくしていくような取組をしていく、そして森林再生を図っていく中で、吸収していくようなことをして、この中にあるものでしっかりとゼロを目指すということで、国のエネルギー政策である原発を稼働してゼロにするということが私は前提に立っておらずに、ここにあるものを使ってやっていくということです。
最後に
という答えでございますので、ぜひよろしくお願いいたします。
以下、私なりの考えです。
本来、宣言にあたっては、カーボンニュートラルを実現することは、大きな社会変容を受け入れることだ、それを目指すことだと宣言しなければならないと思います。
カーボンニュートラルに対する技術を一つ一つ正しく理解し、その費用対効果を正しく分析することが必要です。2050年までの30年間のかかるコストもまた正しく受け止める必要が前提であると考えています。その上で、脱炭素社会というのはこういう社会変革だ、社会変容だと説明をする必要があると考えます。
さらに、今後、おおよそこのぐらいのコストを受け入れなければならない、人々が暮らす上での様式もかなり変化することが予想される。例えばガソリン、灯油、LPガスなどはひょっとしたら使わない社会となる可能性がある。今現在の技術ではここまでは大体見込みが立っているんだけども、その先はまだ可能かどうか分からない部分があると、体系立てて説明しながら進めていく必要がある事柄だと考えています。
その際には、森林環境税、これも今後導入されます。また、カーボンプライシングの一つとして炭素税なども検討される。そういった税負担の議論、そしてベースロード電源としての必要性から原子力発電所活用の議論なども先行して行い、理解と合意を得る方向で進めることが求められます。
早急に宣言を補ってこういった議論を開始をしていただきたいと思っています。
ぜひよろしくお願いをいたします。
質問事前通告
質問項目:「脱炭素社会の実現」について
今議会に示された市長施政方針には、市政運営のポイントとして「脱炭素社会の実現」が掲げられました
- 以下の文言に対して、市長はどのような受け止めをし、定義しているのか
・ 「脱炭素社会」
・ 「カーボンニュートラル」
・ 「ゼロカーボンシティ」 - 「ゼロカーボンシティ」に挑戦とは、市が行う取り組みとして具体的に どのような事柄を指すのか
- 「脱炭素のまち出雲」とは、市がどのような状態となると「実現したと」言えるのか
- なぜ、カーボンニュートラルの鍵が水素なのか
- 7月に設立される新電力会社に、出雲市も出資し地域新電力事業に取り組むことは、エネルギーの「地産地消」以外に、「脱炭素社会」や「カーボンニュートラル」に資する取り組みと言えるのか
- 「ゼロカーボンシティ」へ挑戦するための合意形成をどのように図るのか
参考:市長施政方針(令和3年6月議会)
脱炭素社会の実現
続いて、「脱炭素社会の実現」についてです。 地球温暖化が原因と見られる気候変動は、異常気象による災害や生態系の変化な ど、地球規模で大きな影響を及ぼしており、その対策が世界的な課題となっています。 国においては、「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、経済と環境の好 循環に向けたグリーン成長戦略が策定されるなど、脱炭素社会実現に向けた取組が加速すると予測されます。
こうしたことから、本市においても豊かな自然と人の営みが調和する、かけがえのない「ふるさと出雲」を次世代につないでいくため、2050年二酸化炭素排 出実質ゼロをめざし、「ゼロカーボンシティ」に挑戦することを宣言いたします。
本市は、県内屈指の太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電施設を有しており、本年7月には官民共同出資による新電力会社を設立して地域新電力事業に取り組み、エネルギーの地産地消を進めます。また、カーボンニュートラルの鍵は水素と言われており、国や産業界の知見と技術を活用して、再生可能エネルギーのベストミックスを進め、「脱炭素のまち出雲」を実現してまいります。