出雲市議会の会派:政雲クラブでは、平成27年(2015年)7月13日~15日の3日間、東京都へ赴き、「地方創生の課題と地域力創造のポイント」「オリンピックへ向けた地方の可能性&国の政策」「日本農業の指針~TPP、農協改革、取組実例紹介等」「メディカルビレッジ戦略会議」などについての視察研修を行いました。
- 視察名
- 政雲クラブ行政視察(真誠クラブ、平成・大社クラブ3会派合同)
- 視察期間
- 平成27年(2015)7月13日(月)~15日(水)
- 参加メンバー
- 出雲市議会 会派:政雲クラブ
山代 裕始/坂根 守/板倉 明弘/松村 豪人/大場 利信/湯淺 啓史
他、真誠クラブ、平成・大社クラブ3会派合同 - 視察先及び調査事項
-
- 「地方創生の課題と地域力創造のポイント」
一般社団法人地域活性化センター 理事長 椎川 忍 氏(元島根県総務部長) - 「オリンピックへ向けた地方の可能性&国の政策」
文科省スポーツ政策企画室 専門官 八田 聡史 氏 - 「日本農業の指針~TPP、農協改革、取組実例紹介等」
農水省生産局政策調整チーム 室長 堺田 輝也 氏 - 「メディカルビレッジ戦略会議」
一般社団法人がん哲学外来 理事長 樋野 興夫 氏(順天堂大学教授・病理学)
いずれも、衆議院第2議員会館
- 「地方創生の課題と地域力創造のポイント」
研修概要
- 日時
- 平成27年(2015)7月13日(月)
- 研修内容
- 「地方創生の課題と地域力創造のポイント」 → 詳細
- 場所
- 参議院議員会館
- 日時
- 平成27年(2015)7月14日(火)
- 研修内容
- 「オリンピックへ向けた地方の可能性&国の政策」 → 詳細
- 場所
- 参議院議員会館
- 日時
- 平成27年(2015)7月14日(火)
- 研修内容
- 「日本農業の指針~TPP、農協改革、取組実例紹介等」 → 詳細
- 場所
- 参議院議員会館
- 日時
- 平成27年(2015)7月15日(水)
- 研修内容
- 「メディカルビレッジ戦略会議」 → 詳細
- 場所
- 参議院議員会館
「地方創生の課題と地域力創造のポイント」
- 日時
- 平成27年(2015)7月13日(月) 14:00~16:00
- 場所
- 参議院議員会館
- 講師
- 一般社団法人地域活性化センター 椎川 忍氏 理事長
- 研修内容
1 椎川氏自身の自己紹介
- 前総務省自治財政局長、元初代地域力創造審議官、第43代元自治大学校長
- 公務員には制約が多いが、仕事以外にライフワークを持つことが必要
- 退職後は更に活動を拡大:様々な分野で活動をしているが、培った人脈とともに様々なプロジェクトやイノベーションを起こしている。
- 創設30周年の地域活性化センター理事長として、地域づくり、「ひと」づくりに奔走中
2 地域活性化センターの説明とPR
- 人材育成とコミュニティの維持・再生による地域活性化が組織目標である。
- 現在、地域活性化センターおよび移住交流推進機構(JOIN)の人材養成塾に研修生として地方自治体出身職員40人と民間出身職員10人の派遣職員がいる。
- 2年間の実務、実地調査、勉強、人脈形成により地域づくりのプランナーを養成する。
- メニュー紹介:
地域づくり人材養成塾/全国地域リーダー養成塾 /地方創生実践塾(拡充)/東京在住職員研修交流事業 /活性化サロン /地方創生フォーラム(拡充)/都市・農村強制社会創造全国リレーシンポジウム(新規)/人材養成コーディネート事業(新規) /H27年度土日集中セミナー:ここの1コマとして隠岐島前高校の「高校魅力化による生き残り」を扱う。 - 出雲市からも研修生の派遣をという思惑が伝わってきた。
3 地方創生の課題と地域力創造のポイント
- 地方創生に関する椎川氏の基本的立場 方向性には大賛成、しかし改良すべき点も多い。自治体消滅の危機ではなく、集落消滅や無居住地区多発の危機である。成功するかどうかに興味がある。人材育成、自立心再生、自治の確立、地域経済の地域内循環構造の構築がポイントであり、若い人達がどれだけ関わるかが大きな課題である。
- 1700自治体のうち何割かは大成功する可能性がある。それは住民自治と経済循環構造ができているところであり、国の言いなりにならず、信念をつらぬいてやるべきことをやれる自治体である。
- いくつかの改良すべき点
- 基本的考え方(国民の認識)の転換が必要
地方を守らないと日本の優秀な人材、企業、大都市は守れない。グローバル経済競争に勝ち向く国を目指すと地方が痛むから国が手当てをするという従来型の「膏薬貼」の考えではダメである。 - 政府のできることには限界があるから国民運動の展開が必要
「移住・交流、地方移住の推進」と「国産国消」の展開。 日本創成会議の試算は人口の移動を考えないで推計されている。 - 教育の在り方が地方創生の成否を握る。
教育格差が経済格差を生み、経済格差が教育格差を生むという負のスパイラルを避けなければならない。 - 一次産業が活性化しなければ地方再生はない。
農業はTPPという黒船来襲で、政府も農家もJAもなんとかするであろ → 最後は所得補償すべき。 また、森林・林業問題は、政府と国会がしっかりと取り組むべき。 - 人口推計は、集落、地区単位で行い、住民が危機感を共有すべき。
市町村全体ではなく、集落、地域が生き残りをかけて立ち上がり、自立できるかが勝負の分かれ目 → 長野県下條村の成功例を説明 人口17万5千人の出雲市全体を対象とせずに、消滅の可能性の強い地域に特化すべきとの意見のようであった。 - 地域内での人材育成の視点が非常に少ない。
- 農山村に「コンパクトシティ」や「小さな拠点」という概念は不要。
大切なのは、集約すべき機能と分散すべき機能をしっかりと仕分けすることである。 - プレミアム付き商品券の地域経済循環(地元商店街利用)に資するよう工夫が必要
- 国の指示が細か過ぎて依存心を助長する恐れを感じる。
交付金欲しさに実感のない戦略が策定される可能性がある。PKIだけに目を奪われると大切なものを失いかねない。 財源は交付金よりは交付税の方が良かったか。
- 基本的考え方(国民の認識)の転換が必要
- 椎川氏の「地方創生の課題と地域力創造のポイント」についての感想
椎川氏は、日本創成会議が出した意見に対し改良すべき点を9点ほど挙げておられる。長年地方の振興に携われ、そこから得られた経験と卓越した見識に基づくもので、私自身今後の地方創生を考えるのに大いに参考となった。 ただ、氏も言われたように、小規模自治体には当てはまるが、17万5千人の出雲市には当てはまらない部分もあり、その部分については市独自に知恵を出すべきと考える。
「オリンピックへ向けた地方の可能性&国の政策」
- 日時
- 平成27年(2015)7月14日(火) 10:00~12:00
- 場所
- 参議院議員会館
- 説明者
- 文科省スポーツ政策企画室 八田 聡史 専門官
- 研修内容
- H36年 スポーツ振興法 制定
- H23年 スポーツ基本法 施行
- H24年 スポーツ基本計画 策定
- H27年 スポーツ庁 設置
近年のスポーツを巡る動向
- スポーツ人口の増加
- スポーツを行う目的の多様化
- 障がい者スポーツの発展
- 地域スポーツ活動(総合型地域スポーツクラブ)の成長
- プロスポーツの発展
- 団体ガバナンスの必要性
上記の動向が、H23年のスポーツ基本法制定、スポーツ基本計画策定、スポーツ庁設置に結びついた。
スポーツ庁は、スポーツ自体の振興にとどまらず、スポーツを通じた健康増進や地域活性化、国際的地位の向上など、スポーツを通じた社会の発展を図っていく事が目的
スポーツを通じて「国民が生涯にわたり心身共に健康で文化的な生活を営む」ことができる社会の実現を目指す。
各省庁との連携
- 厚労省:健康寿命延伸、医療費抑制
- 外務省: 国際交流、国際貢献
- 国交省、農水省、環境省:地域社会の活性化
- 経産省:国民経済の発展
スポーツによる地域活性化事業
- スポーツを通じた健康増進の意識の醸成や運動・スポーツへの興味・関心を喚起する取り組み
- スポーツツーリズムを活用した地域の活性化
具体例
- 健康ポイント等のインセンティブ付き運動・スポーツプログラムの実施
- オリンピアン、パラリンピアンなどを活用した各種スポーツイベントの開催
- 健康に関する知識・理解向上のためのシンポジウムや健康運動・スポーツ教室
- 地域スポーツコミッションが実施する新たなスポーツイベント創出及び誘致等の取り組み
各省庁との連携により、「健康寿命延伸、医療費抑制」「国際交流、国際貢献」「地域社会の活性化」「国民経済の発展」が諮られる事が重要となってくる。スポーツを媒介に人と人が結びつき地域の絆を強め、活力となる事が大切と感じた。
事業としては、「健康ポイント等のインセンティブ付き運動・スポーツプログラムの実施」など、健康増進の観点から早急に検討すべきであろう。
「日本農業の指針~TPP、農協改革、取組実例紹介等」
- 日時
- 平成27年(2015)7月14日(火)14:00~16:00
- 場所
- 参議院議員会館
- 説明者
- 農水省生産局政策調整チーム 堺田 輝也 室長
- 研修内容
農業をめぐる情勢
【世界情勢】
年 | 米国 | 中国 | 日本 | 比率 |
---|---|---|---|---|
1995 | 7.7兆ドル | 0.8兆ドル | 5.3兆ドル | 3:0.3:2 |
2010 | 14.9兆ドル | 5.9兆ドル | 5.5兆ドル | 3:1:1 |
2014 | 16.8兆ドル | 10.4兆ドル | 4.8兆ドル | 3:2:1 |
世界人口の増大・生活レベルの向上、日本経済の地位低下
人口 2000年:60億人 → 2050年:92億人(1.5倍)
食料 2000年:45億トン→ 2050年:69億トン(1.6倍)
うち穀物 2000年:18億トン→ 2050年:29億トン(1.7倍)
※生活レベルの向上による消費構造の変化を伴いながら需要が拡大
※世界的な食料需要ひっ迫、世界市場で買い負け
気候変動
気候変動に関する政府間パネルの予測モデルでは
今世紀中に平均気温で2~4℃上昇
→ 低緯度帯は少しでも上昇すれば農業生産減少
→ 中・高緯度帯でも3℃以上上昇で減少
【国内情勢】
担い手確保、技術継承
全国では農業従事者の2/3が65歳以上、島根県は7割超
→ 今後少ない担い手で農地・農業を切り盛りする必要、
→ 労働力不足・技術継承も深刻化
農政の安定性(経営を見通すことのできる政策基盤
H27:米の直接支払交付金が7500円
→ H30:生産調整の廃止(目標配分なし)、収入保健の導入
消費トレンドの変化
年 | 外食 | 酒・飲料 | 調理食品 | 油脂等 | 菓子類 | 農畜産物 |
1990 | 22.6 | 7.8 | 8.3 | 3.0 | 6.8 | 51.4 |
2010 | 21.7 | 10.4 | 12.2 | 7.3 | 7.3 | 44.1 |
2030推計 | 21.0 | 11.2 | 16.7 | 8.0 | 8.0 | 38.0 |
市町村で考えておきたい事
【販売、6次産業化】
- 農業生産額(漁業、特用林産含む): 11兆円
- 末端の食料関連産業の国内生産額 : 94兆円
(食品製造36兆円、関連流通24兆円、飲食店20兆円)
【組織化、後継者確保、周年雇用(勤務)、女性の活躍】
- 機械共同利用組合 → 集落営農組織 → 法人化
- 組合員の定年就農、組合員子弟の就農、外部からの就農
- 園芸導入、加工・直売、ソーシャルビジネス等による周年雇用環境
【水田農業と地域コミュニティとの関係(集落営農活動とコミュニティ活力の相関性)】
- 全国的にも、集落営農が確りしているところは、コミュニティの活力・自治機能が高い
→ 担い手と土地所有者の関係維持
→ 土地所有者の集落帰属意識をつなぎとめる効果
出雲市の副市長を勤められた堺田氏は、地方農業の実状も充分に認識されており、どちらかというと「苦しい説明」に終始されていたのではないか。
なぜならば、国の政策として、農業をどのように方向付けるのかがわかりにくく、政策が短時間で変化する状況であるからだ。
政策にかかわる者は「農政の安定性(経営を見通すことのできる政策基盤)という話をしながら、なかなかその具体策が見いだせないでいるではないだろうか。
TPP交渉については、この時点では何も確定していない状況だったのであるが、TPPの発効がH30年4月頃と予想される中(H27年11月25日現在)、同じH30年には、生産調整の廃止や、収入保健の導入が予定されており、水稲を中心に農業は激変するものと思われる。
「メディカルビレッジ戦略会議」
- 日時
- 平成27年(2015)7月15日(水) 10:00~11:30
- 場所
- 参議院議員会館
- 説明者
- 一般社団法人がん哲学外来 樋野 興夫 理事長
(順天堂大学教授・病理学) - 研修内容
がん哲学外来とは
生きることの根源的な意味を考えようとする患者とがんの発生と成長に哲学的な意味を見出そうとする人との対話の場
科学としてのがん学を学びながら、がんに哲学的な考え方を取り入れていくという立場
経緯
- 2009年:「特定非営利活動法人(NPO法人)がん哲学外来」が設立(理事長 樋野興夫 氏)
2011年:「がん哲学市民学会」設立・「がん哲学外来コーディネーター」養成講座を開始
→ 「がん哲学外来」が、「対話の場」であるメディカル・カフェという形で全国に広がる
→ 地域の有志による運営、病院での常設などに加え、さまざまな形での協力を行う企業も増加 - 2013年:「一般社団法人がん哲学外来」設立(NPO法人がん哲学外来から組織変更)
一般社団法人がん哲学外来の概要
設立年月日 2013年7月3日
理事長 樋野 興夫(医学博士/順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授)
一般社団法人がん哲学外来の活動事例
- がん哲学外来とメディカル・カフェ(がん患者や家族の安心につながる対話の場)の開催
- がん哲学外来の活動を広く周知するための広報と啓発活動
- がん患者、一般市民を対象としたシンポジウムやセミナーの開催
- 他の医療施設との連携活動
- 研究活動
- ニュースレター、機関紙の発行など
- がん哲学外来市民学会開催
- がん哲学外来コーディネーター養成
樋野興夫理事長は、大社町鵜鷺のご出身。
小学校の跡地を「鵜鷺メディカルビレッジ」として活用することを検討されているとの事。
群馬県の万座温泉に、末期がんの人々の療養施設設立を目指して奔走されている。
がん哲学外来やがん哲学外来メディカル・カフェは、医療者と患者さんの隙間を埋めるために活動されているが、絶対数が足りないとの事。
理想の数は、人口1万5千人に1箇所(全国に7000箇所)のメディカル・カフェが必要と感じていらっしゃるようだ。
メディカル・カフェを発展させたかたちとして、メディカルビレッジを構想されている。
メディカルビレッジに必要なもの
- 最後の時を心安らかに穏やかに過ごせる環境
- 経済負担をできるだけ縮小
- 臨終に立ち会う医師とスタッフ
周辺には、
- 経済的余裕のある患者さんや家族が逗留する温泉宿泊施設
- メディカル・カフェ
- 医療者の住まい
調査、研究、地元との協議が必要だが、応援すべき事柄であると感じた。